ヘブライ語で書かれた写本で最も豪華な作品の一つ
 


大英図書館 (ロンドン)

The North French Hebrew Miscellany

Add. Ms. 11639

ヘブライ語で書かれた写本で最も豪華な作品の一つです。原版は、1278年ごろにフランス北部で作られました。ユダヤ人の歴史と文化にとって非常に重要な時期でした。

360部の限定出版。解説書が各部に付いています。

ISBN 0 948223 219
価格 £7,425.00

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Folio 172a - この写本を書いたBinyaminという人に関する記述 大きく »

大英図書館からの手紙 (.pdf)

この写本について

The North French Hebrew Miscellanyは大英図書館に所蔵されているヘブライ語写本の中でも高い質を誇る作品です。今から720年以上前、ヨーロッパに住むユダヤ人たちを取りまく世界は激しく変化していました。同じ時期に作られた写本には、写本作りを援助した人の趣味が反映されており、また、数百の詩を含む84種類の著作が収録されています。モーセ五書、預言書、雅歌、その他の聖書中の文章が含まれています。その他に載せられているのは、毎日の祈り、安息日の祈り、お祝いの祈り(ユダヤ暦の新年を祝う祭での祈り、大贖罪日での祈りなど)、食後の祈り、Pirkei Avot (父祖の教訓)、結婚・離婚・ビジネス関係に関する決まりや定型文、聖句が入った二つの小箱(Tefilin)に関する規定、食べる前の肉の処理に関する規定、現存する最古のヘブライ語版 MezuzahIsaac de Corbeilの著作Mitsvot Katanの写しなどです。

ゴシック様式による装飾

本文と同様に、写本に施された装飾も綿密に仕上げられております。全1494ページの大部分が、熟練の芸術家によって、ゴシック様式で装飾されています。フランス北部において、Ashkenaziのヘブライ語で書かれた写本の装飾は非常に高い質を保っていました。この様式で描かれた写本の中で、現存するものはわずかです。

Folios 117b-118a – 117bのフォリオ(二ページ分の紙)では、ダビデ王が黄金の冠とリスの皮でできたマントを着ています。ハープを弾いている場面が描かれています。118aのフォリオでは、アブラハムがとがった帽子をかぶり、ある家の中の天蓋の下に立っています。この場面は『創世記』の第18章1節と、2節に対応しています。8節に対応した場面がその次に描かれています。

この写本は当時の北フランスで最高級の作品であり、そのことを示す装飾が多くの箇所で見られます。原典の文章をこの本に書き写したBenjamin (Binyamin)という人は、写本作りの専門業者に匹敵するほど高い技術を持つ芸術家と連携しました。ページ全体に描かれた絵には聖書の中の有名な場面が多く描写されています。細かい模様、花、鳥、魚、その他の生き物などが描かれています。

Folio 520a - サムソン (聖書の『士師記』から) 詳しく »

この写本がアルザス地方(現フランス)で作られたことを示す文章が見られます。弊社の解説書において、この写本の装飾について説明しているYael Zirlin氏によれば、装飾と絵は二ヶ所で製作されたと推測されます。一部はSaint-Omerという町で作られ、フランス王によって雇われた芸術家が、パリのシテ島にあったアトリエで他の部分を作ったようです。

今日の学者は、この写本の装飾を施した芸術家の詳細について、さまざまな説を唱えています。たとえば、ユダヤ人のグループとキリスト教徒のグループによってこの写本が作られたという推測、装飾や絵が一人の芸術家による作品だという推測、複数の芸術家による作品だという推測などが挙げられます。作品のそれぞれの工程が行われた場所や日付も正確には分かっていません。弊社の複製本に付属している解説書では、新たな可能性が出てきました。Malachi Beit-Arié氏は、写本の各ページが作られた方法と、まとめられた経緯を細かく検査し、Yael Zirlin氏の推測を実証しました。Saint-Omerで製作が始められ、その後、パリで作業が続けられたようです。多くの専門家は、この写本は3人から5人までの芸術家によって装飾されたと考えています。

数え切れないほどの装飾は目を楽しませてくれます。芸術史を研究している多くの方々が、ページ全体に描かれた絵の技巧を高く評価しています。この写本を手にとって調べられる許可を得た学者はごくわずかです。

Folio 260b - アハシュエロス王の前に立つエステル 大きく »

この作品のパトロン

写本作りを支援した人は、とても裕福な学者だったようです。その人が重要だと考えた文章が多く収録されているだけでなく、高価な芸術品でもあります。写本中の絵には、パトロンの考えと価値観が反映されています。例えば、当時のユダヤ人たちが直面した危険、救世主への期待、ユダヤ人の指導者や英雄たち(モーセ、サムソン、ユーディト、ダビデ、ダニエル、エステルなど)、敵によって壊された神殿を再建する夢が描かれています。

Malachi Beit-Arié氏は、この写本の文章を書写した人は本の所有者本人であろうと考え、解説書において詳しく説明しています。

その考えが正しいとすると、写本の数箇所に現れているBinyaminという書写の専門家が本文を書き写したと考えられます。しかしながら、Yael Zirlin氏の考えは異なり、パトロンは(モーセの兄)アロンと同じ名を持つ人物だろうと推測しています。それは、ページ全体に描かれた絵のうち、7つがアロンを明らかに過大評価しているからです。

誰がパトロンであったか、まだ解明されていません。読者の皆様がご自身で答えを探ってみて下さい。より有力な説がこれから出てくるかもしれません。

Folio 518b - 海獣 Leviathan 詳しく »

この写本がたどった運命

あるラビ(ユダヤ教聖職者)によって書かれた、この本の売買を記録した証文によれば、1431年にSamuel b. HayyimからAbraham b. Moses of Coburgに売られたようです。迫害が激しい間、所有者は姿を消し、写本はフランスから外国へ運ばれたようです。この本は、1479年にイタリアのMestreに到着し、まもなくVeneziaに移されました。1480年にPadova、翌年にIesiに着きました。

15世紀末までにイタリア北西部にたどり着き、16世紀にはBologna付近の町に移されました。 上質の子牛の革で作られた表紙には、当時、繁栄していた Rovigo家の紋章が刻まれており、Kabbalahを支持するユダヤ教学者Abraham b. Michaelがこの本を所有していたと考えられます。17世紀に、この作品は検閲を受け、その後、Barberini家の手に渡りました。それから1世紀ほど、この写本がどのような経緯で所有されたかは不明です。フランス王ルイ14世や、フランスの有力な政治家も、ヘブライ語写本を収集していたそうです。18世紀の後半に、Giovanni Bernardo de Rossi氏は、この写本を直接手にとって、詳しく調べました。Variae lectionis veteris testamenti (1784年に発表)という著作で、それについて書いています。この作品はミラノのReina図書館に所蔵された後に、1839年にはPayne & Fossという会社へ、さらに大英博物館に売られました。博物館でAdditional Manuscript 11639として登録され、13世紀のフランスに暮らしたユダヤ人たちの芸術と文化を伝える名作として保管されました。

Folios 521b (右) – 縛られているイサク。(聖書の)『創世記』第22章9節から13節にかけて、アブラハムが祭壇を作り、息子イサクの前髪を掴み、ナイフで殺そうとしている場面が描かれています。ナイフの刃を掴んで、殺しを止めさせた天使の方に顔を向けています。同時に、天使は一匹の羊を指差しています。アブラハムは 息子を殺さず、その羊を殺し、神に捧げました。 イサクを縛って、神へのいけにえとして捧げようとする場面は、アシュケナジー系ユダヤ人が作ったこの時期の写本によく見られます。

Folio 522a (左) – 幕屋(移動式の神殿)の部品。エデンの園を守る2頭の獣に護衛された契約の箱が紋章の中央に描かれ、下側には神に供えられたパンが置かれた食卓が描かれています。右側にはマナを入れる容器が見えます。この絵では、契約の箱は黄金の小箱の形をしており、棒が通された輪が箱に付いています。箱のふたが上部に色の付いたアーチで表現されています。2頭の獣の翼がアーチを覆うほど広がっています。どちらの獣も6枚の翼が生えており、聖書のエゼキエル書第10章20節、21節に見られる描写(獣には4枚の翼が生えているという記述)と異なります。イザヤ書第6章2節には、6枚の翼がある天使が登場します。お供えもののパンが置かれた食卓は六脚の長い食卓として描かれ、金色をしています。6つの丸い物とナイフ2丁が食卓の上にあります。アロンが一束のマナが入った容器を、出エジプト記の第16章33節、34節の記述のように、神と証の箱の前に置いています。契約の箱を守る2頭の獣の間から神がモーセに話しかける様子は、マナの容器が正しく置かれていることを示しているようです。

Folio 352a. 拡大 »

この写本が作られた時代

この写本が作られたころ、フランス北部とその付近ではユダヤ人コミュニティーが繁栄していました。1040年にTroyes (トロワ)という町でRashiが生まれたとき、そこには千人ほどのユダヤ人が暮らしていました。その町で農業、彫刻、はんだ付け、布織りなどを学んだ後、Rashiは (現在のドイツにある) MainzとWormsで勉学に励みました。1070年に帰郷し、塾を設立します。他の塾との競争に勝ち、やがてライン河地方でも人気を得るようになりました。

1095年、96年に行われた十字軍の侵略で、Rashiは何人かの友人と親戚を失いました。彼の著作に、その出来事が少し触れられています。彼には3人の娘がおり、皆、学者と結婚しました。Rashiは、聖書などに関する注釈によって、キリスト教徒の聖書学者にも大きな影響を与えたことで良く知られています。聖書に関する解説は、ヘブライ語で印刷された最初の本でした。Rashiは、ヘブライ語からフランス語への翻訳も活発に行い、著作は多くの研究で引用され、活用されました。彼の子孫と弟子たちは、Tosafistと呼ばれるタルムード注解者のグループの育成に貢献し、彼らが住んでいた地域はユダヤ教研究の重要な拠点として発展しました。この写本が作られる数十年前の1240年、北フランス出身の学者Jehiel of Parisは、フランス王が臨席する法廷で行われたDisputation of Parisにおいて、ユダヤ教を懸命に弁護しました。

Folio 186b. 拡大 »

見せ物のようなこの裁判に続いて、多くのユダヤ教書籍が民衆によって焼かれてしまいました。このような事件は何回もあり、現存するヘブライ語の写本が少ないことの原因の一つと考えられます。強制的な焼却にはフランス王も個人的に関わっていました。この写本を書き写したBenjaminは、上記の学者Jehielから聞いた話を引用しています。Jehielは上記の裁判の後、今のイスラエルにあたる地域に移り住みました。1288年、ユダヤ人たちが「過ぎ越しの祭」を祝っていたある日、Isaac Châtelain というユダヤ人の家に意図的に放置されたキリスト教徒の遺体が発見されました。キリスト教徒が起こした暴動により、Troyesのユダヤ人たちが犠牲になりました。

フランシスコ修道会とドミニコ修道会による取調べの後、13人のユダヤ人が火あぶりにされ、殺されました。数年後、フランスのユダヤ人たちは国外に追放されました。1308年には、フランスのAubeという地域からユダヤ人は一人もいなくなりました。1966年にTroyesでRashiコミュニティーセンターが設立され、およそ400人のユダヤ人コミュニティーを支援しています。

 

写本に収録された主な著作

  1. モーセ五書 (聖書の初めの五書)と、週ごとに読まれる箇所
  2. ユダヤ教の祝祭と、「過ぎ越しの祭」の前の特別な安息日に読まれる箇所 (聖書中の預言書から抜粋された文章)。母音符号朗誦用記号句読点が付いており、見出しには装飾が施されています。
  3. 「過ぎ越しの祭」と「シャブオット(七週の祭)」に読まれる文章の
  4. Tikun soferim: モーセ五書を書き写す専門家への注意書き
  5. 「過ぎ越しの祭」、「シャブオット(七週の祭)」、「スコット(仮庵の祭)」で読まれる箇所 雅歌、ルツ記、伝道の書からの抜粋
  6. Seder hama‘arakhah: (11世紀、フランスに生きた)Elijah ben Menahem ha-Zakenによって整えられた、週ごとの聖書箇所
  7. 毎日の祈りと安息日用の祈祷文
  8. 新月、プリム (ユダヤ教の祭の一つ)、断食の日のための聖書箇所
  9. Pirkei Avot 「先祖の教訓」: ミシュナーに収められた、夏季の安息日の午後に関する教訓
  10. Amidahの祈りの祝祭版
  11. ユダヤ教の祭の一つ「過ぎ越しの祭」で使われるHaggadah
  12. 「過ぎ越しの祭」の七日目に読まれる聖書箇所の訳
  13. 「シャブオット(七週の祭)」で読まれる聖書箇所の訳。十戒とその他の著作の訳を含む。
  14. Hosha‘anot: 「スコット(仮庵の祭)」で唱えられる聖歌集
  15. ユダヤ教の祭の一つSimchat Torahで唱えられる聖歌
  16. 「過ぎ越しの祭」、「シャブオット(七週の祭)」、新年祭、「スコット(仮庵の祭)」の礼拝で唱えられるpiyyutim (宗教詩)の選集
  17. 祝祭日と断食の日に読まれる聖書箇所の表
  18. 結婚と誕生に関する祈祷文
  19. 「過ぎ越しの祭」の前日 Sederに関する注意書き
  20. 「スコット(仮庵の祭)」、結婚、悪夢のお祓いのための祈り (Lulavという植物が使われます)
  21. 動物の屠殺と肉の調理に関する戒律
  22. 葬儀について
  23. 離婚、特殊な結婚、金の貸し借り、遺言状などの書式集
  24. 密告者と裏切り者に与える罰について
  25. Rabenu Gershom ben Judah (960-1028)の出した判決集。彼は著名なアシュケナジー系学者で、一夫多妻を禁じたとされています。
  26. Seder Halitsah: ユダヤ教で認められていた特殊な結婚を無効にするための儀式について
  27. 特別な安息日のための詩の選集 (「ハヌカ」、「プリム」の前、 「過ぎ越しの祭」などで唱えられるものを含む)
  28. 「過ぎ越しの祭」、「シャブオット(七週の祭)」、「スコット(仮庵の祭)」で唱えられる宗教詩 (毎年、『創世記』の朗読が始められるShabbat Bereshitで使われる詩を含む)
  29. 朝の礼拝に唱えられる32編の宗教詩
  30. 新年祭の礼拝で唱えられる66編の宗教詩
  31. 「ヨム・キプール (大贖罪日)」の礼拝について (82編の宗教詩を含む)
  32. Kol Nidre (ヨム・キプールの前日)の礼拝について (32編の宗教詩を含む)
  33. (聖書中の)哀歌 (ユダヤ暦Avの月9日に唱えられます)
  34. (聖書中の)エステル記 (ユダヤ教の祭「プリム」において唱えられます)
  35. 西暦1280年から1296年までのカレンダー (新月が見える日が書かれています)
  36. ざんげの祈り (「ヨム・キプール (大贖罪日)」で唱えられるものを一部含む)
  37. 罪の赦しを乞うための70の祈り
  38. 66編の宗教詩
  39. 9つのTokhahot (罪に対する訓戒)
  40. 11のAkedot (『創世記』第22章に書かれている出来事に関する祈り)
  41. 37番目から40番目までの文章(上記)の索引
  42. Mezuzah(扉に取り付ける小さい巻物)の文章と、Tefilin(礼拝で身に着ける小箱)を作る際の注意書き (Maimonidesが定めた法に基づく)
  43. 旅行者のための72節の祈祷文 (食後の祈りや、聖職者の祈りを含む)
  44. 安息日に食卓で唱えられる聖歌を含む9つの宗教詩 (1276年にMetzで殉教したRabbi Shimshonに関する写本を書いた人物によって作られた歌が含まれています。)
  45. 西暦1278年から1311年までのカレンダー
  46. Isaac de Corbeil による著作Sefer Mitsvot Katan。一つ前の著作に含まれる1278年のカレンダーから判断して、1277年ごろに書かれたと推定されています。
  47. 韻文で書かれた戒律に関するElijah ben Menahem ha-Zakenの注釈
  48. 祝祭で唱えられる宗教詩に関する注解
  49. 断食の日と記念の催しに関する著作Megilat Ta‘anitへの付録
  50. 記憶を助ける印が付けられた、聖書に関する表
  51. スペインの詩人・哲学者Moses ibn Ezra (1055年ごろ~1135年ごろ)による詩集Sefer Tarshish
  52. 新年祭のための詩に関する注釈
  53. 「ヨム・キプール (大贖罪日)」のための詩に関する注解
  54. Kabbalah思想に基づく瞑想に用いられるGematria
  55. 祝祭と断食の執り行いに関する戒律
Folio 521a – 箱舟の中にいるノア。『創世記』第8章4節から13節にかけて、箱舟がアララット山に停泊し、ノアが烏と鳩を放つ場面が描写されています。このページに描かれた箱舟は緑色の水に包まれ、山の目印は何も描かれていません。しかし、烏は箱舟の屋根に留まり、鳩はオリーブの枝を運んで、ノアのもとに帰っています。この写本のように、煉瓦(れんが)の塀に停泊している箱舟の絵は珍しく、アシュケナジー系ユダヤ人が作ったこの時期の写本にしか見られません。

余白に書かれた文章

  1. Hallel: 詩篇第113篇から118篇まで (新月の日と祝祭で唱えられます)
  2. 詩篇
  3. 安息日の食卓で唱えられる聖歌Barukh el elyon (Barukh ben Samuel作)
  4. 安息日の食卓で唱えられる聖歌Yatsa devar hamalkah
  5. 箴言
  6. 賛美の祈りと神の加護を願う祈り
  7. ダニエル記
  8. エズラ記とネヘミア記
  9. 上記の27と同じページに載せられた宗教詩に関する注釈
  10. 上記の28と同じページに載せられた宗教詩に関する注釈 (「過ぎ越しの祭」で唱えられる詩)
  11. 聖書中の預言書から抜粋された文章(主要な著作の第2番)を補う文章であり、毎週唱えられる箇所です。それを唱える前と、締めくくる時に行われる祝祷が付いています。
  12. ヨブ記
  13. 食後の祈りの初めの部分を成す宗教詩
  14. 上記の36、37、38と同じページの主要部に載せられた項目に関する注解
  15. 各行の初めの文字をつなげると「ソロモン」という語になる様式で書かれた詩
  16. ヘブライ語聖書の母音符号に関する論文 (母音符号とは単語の読み方を明示する記号の一種です)
  17. ヘブライ語聖書の朗誦記号に関する論文
  18. ヘブライ語の発音に関する論文
  19. 北フランスの学者による、朗誦に関する詩
  20. ヘブライ語聖書の写本に含まれる重要な手紙の一覧表
  21. 聖書中のGematriaの例
  22. 算数の謎々
  23. 救世主をテーマにした、短い文
  24. タルムードをテーマにした、短い文
  25. モーセからタルムードの編纂者までのユダヤ教学者たちを扱った一覧表
  26. タルムードで触れられているユダヤ教学者たちの名前のアルファベット順索引
  27. ミシュナーとタルムードに関係するユダヤ教学者の表
  28. 法律上の証人の資格を剥奪された人々に関する説明
  29. Tobitの書 (中世の写本において非常に珍しい作品)
 

前書き

複製本を作り続けている弊社の喜びは、お客様が作品のさまざまな魅力をご自分で発見される瞬間です。ページをめくり、挿絵をひとつひとつご覧になるとき、さまざまな色の織りなす美しさ、紙の手ざわり、上質な革の香りなどが感じられます。原本が作られたおよそ720年前に生きたパトロン、書記、芸術家のように、作品をとても身近に感じてくだされば、これ以上の喜びはありません。

弊社は20年以上にわたり、写本の正確な複製作りに努力を重ねて参りました。総責任者であるLinda FalterとMichael Falterは、原本の紙の質、色づかい、特殊な工程で磨かれた金の装飾を正確に複製し、これまで多くのお客様から好評を賜っております。どの製品も限りなく原版に近く作られております。質の高い複製本を作ってきた職人が働くイタリアのアトリエで、全ての製作工程を総責任者が監督します。

Folios 113b-114a - 身分の高い僧として描かれたアロンが、火が灯る燭台に油を注いでいます。

複製本を作る前の作業

複製を始める前に、原本の写真を撮ります。全く歪みのない写真を撮るために、原本を丁寧に解体します。大英図書館のJohn Mumford氏は、数日をかけて解体しました。時間がかかったのは、本の背に塗られた糊を取らなければならなかったからです。この本は、イタリアで16世紀に製本し直され、19世紀に大英博物館で再び糊付けされました。この作品を所有していたRovigo家によって修復された後、この本は良い状態で保管されてきました。

大英図書館で撮影を行うLaurence Pordes

質の高い写真

原本を特別な台で支え、撮影をします。気温と湿度の変化によって、写本が傷つかないように細心の注意を払います。Large-formatの透明なスライドと、特別に作られたフィルムで正確な写真を撮ります。その後、最新設備を備えた部屋で写真の分析を行います。

色の分析

原本の正確な写真をもとに、ミラノの職人たちが色の解析を行います。デジタル技術を用いた分析の後、色彩を専門とする職人たちが手作業で色を調整します。特別な工程で作られた紙に印刷した試作ページを、Michael FalterとLinda Falterが、大英図書館にある原版と比較し、直すべき点を一ページずつ調べます。数ヶ月間、試し刷りが行われ、原本との比較が続けられます。原版に限りなく近い色が再現されるまで、試作と訂正を繰り返します。

原版に使われた羊皮紙と同じ外見、手ざわり、耐久性を備えた紙を作るために研究を重ねました。原本の紙(vellum)の透かし度、 感触、厚さを細かく調べ、同じものを特別の工程で作りあげました。複製本に使われている紙は、表面を加工していない、pH中性の植物性の羊皮紙です(重さ 125 gsm)。

Folio 518a – 同一の子供の親だと主張する二人の売春婦をソロモン王が裁いています。左側には、王に話しかける女たちが描かれ、一人はひざまずいて、不安そうな顔をしています。自分を弁護しているようです。その女の後ろに立つ売春婦は赤い服を着て、上品な飾りを頭に着けています。小顔で、笑みを浮かべています。服や表情から判断すると、後者が本当の母親のようです。ソロモン王は人差し指のみ動かしています。王の右には、腕に抱いた子供を殺そうと剣を振り上げた召使が見えます。

印刷

弊社の総責任者Michael Falterは印刷業を営む家の三代目です。製作の各工程を現場で監視しています。25年以上、複製本作りを担当している印刷職人がミラノの印刷所でこの複製本を作りました。印刷には忍耐と技術が要ります。たとえば、一ページ分の色のバランスと重なり具合を原版と全く同じようにする作業におよそ24時間かかります。10色によるリトグラフ印刷という方法が使われます。総責任者Michael FalterとLinda Falterは印刷期間中、ミラノに滞在し、印刷されたページが原本を忠実に再現しているかを一ページずつ確認します。

金による装飾

原版の装飾では、たとえば、特別な方法で磨かれた金が使われています。写本が作られた当時と同じ工程で作ることができませんでした。したがって、原版と異なる工程で再現する方法を数年かけて開発しました。装飾された各ページに職人が手作業で金と銀の箔を貼りつけました。盛り上がった形をした金装飾など、他の装飾部は、原版と同じ方法で再現されております。

複製本の表紙 more »

表紙

複製本の表紙は、子牛の皮をなめした高級革でできており、表面は手ざわりの良いように加工されています。革に刻印された箇所には23カラットの金が使われています。ヤコブの夢を描いている円形飾りと、ある時期に原本を所有していたBarberini家の紋章(蜂が描かれた盾)も金で刻印されています。複製本に付属している解説書の表紙は白いvellum紙で、複製本の表紙と好対照をなしています。職人による外箱に二巻とも入れて、飾ることができます。外箱の縁にも革が使われています。

 

この複製本の魅力が解説書において詳しく説明されています(英語)。さまざまな分野の専門家が重要な点を分かりやすく解説します。この作品が作られた背景の概説、絵と装飾の調査、この作品に収められた全84点の著作の解説に加え、原版に使われたインク、紙、絵の具、表紙の材質に関する文章が載せられています。解説書には、索引と専門用語の説明も収録されています。ヘブライ語写本とフランスの歴史の分野で活躍する専門家が、原本について、今まででもっとも明解な記述を提供します。解説書に使われる紙、表紙、説明、印刷される字の書体などをよく吟味した上で決定しました。透かし模様の入ったFabriano Ingres紙(重さ 90 gsm)が白い表紙に綴じられています。

オックスフォード・ヘブライ・ユダヤ学センターの講師Jeremy Schonfield氏はユダヤ教の宗教儀式とラビ(ユダヤ教学者)思想の専門家で、この解説書の編集を担当しました。序文を執筆なさいました。弊社の他の製品に付属する解説編集にも協力して下さいました。

複製本と解説書

解説書の内容

  1. 目次
  2. 概説 弊社について
  3. 序文 Jeremy Schonfield (Mason Lecturer, Oxford Centre for Hebrew & Jewish Studies)
    Jeremy Schonfield氏の文章の抜粋

    The intention of the scribe was not merely to produce an object of beauty, however, but self-evidently to make texts available in an elegant and practical way…

    The range of texts in this book is impossible to summarize briefly. So wide is the collection that this might be seen as an entire library rather than a single codex, since it contains everything that might be needed for the day-to-day life of a wealthy householder. The biblical books and annual liturgy that form the bulk of the manuscript would have made it possible to follow or perform the synagogue and home ceremonies. The contractual formulae in text XXIII would have helped him function as a merchant…

    The copyist of the manuscript, Benjamin, was also, it transpires, a poet, who on fols 534v-535r has put his name to a funeral elegy of his own composition in memory of a certain ‘Rabbi Samson of Metz’ who died a martyr in 1276. History has preserved no other trace of this martyr, whose name is absent from all the known sources. In fact, Rabbi Samson and his tragic death – considerable attention is lavished here on the details of the tortures he endured before being put to the stake – are recorded only in the present manuscript.

  4. この写本が作られた場所 Michel Garel氏(フランス国立図書館で、以前、ヘブライ語写本を管理)が13世紀のフランス北部について説明します。この作品のパトロンと製作者たちが生きた時代・地域の政治と歴史的背景が分かります。
    Michel Garel氏の文章の抜粋

    The number of thirteenth-century illuminated Hebrew manuscripts from the north of France which have come down to us today in both public and private collections can be counted more or less on the fingers of one hand. Of these, the British Library’s North French Miscellany is unquestionably the richest and most beautiful, on account both of the variety and quality of its illustrations and of the extent and diversity of its texts…

  5. 大英博物館によるthe North French Miscellanyの入手 大英図書館のDiana Rowland-Smith氏が写本の歴史の後半部を詳説します。
  6. この写本が製作された経緯 Malachi Beit-Arié氏(エルサレム・ヘブライ大学教授、イスラエル科学・人文科学アカデミーによるヘブライ語古文書プロジェクトの総責任者)がこの作品がどのように製作されたか、また、なぜフランス北部で作られ始めたと推定されるかを説明します。
    Malachi Beit-Arié教授の文章の抜粋

    This scribe included his name in three short colophons, located in a way that suggests that he indeed copied all the texts. Detailed colophons usually specify the scribe’s full name, the date of completion, the locality, the name of the patron of the manuscript or an indication that the book was copied for the scribe’s personal use and occasionally, the duration of copying, the nature of the model and the scribe’s intervention in the transmission of the text. The scribe of the North French Miscellany merely indicated his private name – Benjamin – by inserting it twice in scribal ending formulae and once at the end of a textual section…..He disclosed his name again in a note appended to a poetic lament he composed and included on fols 534v-535r, stating: ‘I, Benjamin the scribe, the copyist of this prayer book, composed this poem on the martyr Samson’. The murder took place in 1275-6.

    Benjamin provides no other information about himself of the production of the manuscript, not even bothering to add the name of his father, the usual way in which a medieval Jew would refer to himself.

    The fact that Benjamin composed an elegy on a martyr suggests that he was something of a scholar….and (that) he copied it for his own use. Startling as it may sound, such an assumption seems to be the only way to understand the absence of the name of a patron who ordered and financed the project, since it is inconceivable that a scribe, hired to produce such a prestigious work, would neglect to mention the name of his patron and to accompany this with blessings and expressions of respect.

    The complexity of the North French Miscellany, the harmonious combination of text and decoration with paintings is unrivalled among extant Hebrew manuscripts from its time or earlier.

    The many inscriptions within the zodiac on fol. 516v might have reinforced our argument concerning the collaboration between the caption-writer and the artist, but the letters were subsequently distorted by gold burnishing, making it impossible to compare the handwriting to the external caption.”

  7. この作品の装飾の表現とスタイルについて フランス国立高等師範学校でユダヤ芸術とヘブライ文化を教えるYael Zirlin氏はエルサレム・ヘブライ大学のユダヤ芸術センターでヘブライ語写本の部門の総責任者でした。フランス国立図書館において、装飾されたヘブライ語写本の管理も担当していました。 解説書では、この作品に収録された装飾や絵の意味と起源を説明し、この作品が作られたアトリエの場所を示す特徴についても記述しています。
    Yael Zirlin氏の文章の抜粋

    139ページ The manuscript was decorated probably in three stages, close together in time, the first two taking place in the same or in two associated ateliers and the third elsewhere. The patron clearly intended to have the manuscript decorated after it was written, but what is seen today surpasses his original intention, for texts as well as decoration were added after the original plan was completed.

    145ページ …The scribe must have been present in the atelier, since he provided instructions for the illuminators.

  8. この写本の表紙について Ilana Tahan氏 (大英図書館でヘブライ語書籍と写本を管理)
    Ilana Tahan氏の文章の抜粋

    The fact remains that in the eighteenth century the Miscellany belonged to the Jewish Rovigo family from Mantua. … Once again data as to how the Rovigo family obtained the manuscript is lacking. And one wonders whether the Barberini bees were covered by floral motifs (on the binding) while the manuscript was in their keep or afterwards. Why would anyone try to obliterate the symbols of such formidable provenance?

  9. Piyyutとフランスの愛の歌 Raphael Loewe氏 (University College London名誉教授、2000年 Seatonian Prize受賞者)
    Raphael Loewe教授の文章の抜粋

    …They were recognized by Professor Geneviève Hasenohr..as part of a 13th-century song, of which the music has survived. Since I shall argue below that the Hebrew piece cannot be adequately interpreted without reference to the French, it will be appropriate to examine the latter first.

  10. 写本に収められた文章の解説 Raphael Loewe氏が、写本中の全84点に及ぶ著作の内容と背景を一つずつ説明します。聖書、宗教儀式、詩、戒律についてテーマ別に解説しています。この章は、ヘブライ語に詳しくない方や、より詳しくお知りになりたい方にも配慮された記述がされております。文章の一部の英語訳が載せられています。この作品の謎を解く鍵になるかもしれません。
  11. 参考文献 (Index of Manuscripts Cited含む)
  12. 索引 (Thematic Index to the Texts, Index of Piyyutim, Index of Poets, Index to the Illuminations & Decoration, General Index含む)
 
写本
  • ページの大きさ およそ16.5cm × 12.5cm
  • 全1494 ページ (0から746まで番号が振られています)
印刷
金と銀を使った装飾
  • 金箔と銀箔が職人の手作業で貼られました。盛り上がった形の装飾が合計611ページに施されています。
  • 原版において、金粉が使われている箇所は忠実に再現されています。
裁断と製本
  • 複製本の本文を印刷した後、原本の各ページと全く同じ大きさに一枚ずつ裁断します。続いて、年月を経た「渋み」を出す仕上げを各ページの端に施します。23カラットの金で装飾部を正確に再現し、2本の手作りのひも (飾り用)を本に縫い付けます。
表紙
  • 複製本の表紙には、手ざわりの良い高級革を使用。23カラットの金による刻印 (中央の紋章、端側)、本の背には無色の刻印。解説書の表紙には、白いvellum紙を使用。
飾り方
  • 複製本と解説書は専用の外箱に収められます。箱の縁の部分には革が使われ、職人の手による大理石模様が施されています。Fabriano Ingres紙が使われています。
贈呈用の保証書 (ご入用なら)
  • 弊社の製品をどなたかに贈呈される場合、弊社のカリグラファーによる、華やかな証明書を無料でお作りします。ご入用であれば、注文時にお申しつけください。
発行部数
  • 360部限定。 その内、330部は通常版(番号が刻まれています)、30部は贈呈に適したAd Personam版(I, II, III, IVのようにローマ数字で番号を刻印)です。シリアルナンバーは、目立たないように、裏表紙の内側に刻印されています。 スチール製の刻印型が使われます。大英図書館の認証印が押された、番号付き保証書を同封。
価格
  • 本体の価格に、製品、発送、保険など、すべての費用が含まれています。ご購入の予約は弊社の Conditions of Saleに基づきます。
 
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